悪党芭蕉(嵐山 光三郎)

悪党芭蕉 (新潮文庫)

悪党芭蕉 (新潮文庫)

皆は松尾芭蕉をどこまで知っているだろうか。奥の細道の人としか認識していないのではないか。私はそうだった。芥川龍之介は「芭蕉は大山師だ」(=つまり大詐欺師だ)と批判した。正岡子規は「芭蕉の句の過半は悪句駄句だ」と批判した。それは芭蕉を神格化テーマパーク化する宗匠への反感、芭蕉の句を鑑賞するよりも芭蕉の廟や碑を建てることに熱中する宗匠の風刺。また芥川と子規には「芭蕉は悪党である」という直感があった。実際いちばん有名な句(古池や蛙飛びこむ・・・)が載っている句合「蛙合」を刊行したのは当時将軍の綱吉の「生類憐みの令」を故意に意識したもの。芭蕉の弟子としては個性の強い者どもが集まり、中には不良俳人もいた。
今回のこの本は「悪党芭蕉」と名付けることで、老人アイドル化した芭蕉を俗人と同じレベルで考え直そうとした本だ。この本は芭蕉の軌跡と秘密が詰まった本。読めば皆「奥の細道」に対する価値観が変わるぞ。