サル学の現在(立花隆)

サル学の現在 上 (文春文庫)

サル学の現在 上 (文春文庫)

サル学の現在 下 (文春文庫)

サル学の現在 下 (文春文庫)

人間とはいかなる存在なのかを考える場合、サル学にぶつかる。ヒトのヒトたる所以は何か。ヒトと動物は本質的にどこで区別されるのか。何がヒト的で何が動物的なのか。ヒトがサルから進化したのならば、どのようにしてサルはヒトになったのか。ヒトになったサルとヒトになれなかったサルとの間にはいかなる違いがあったのか。こいつらに答えようとするとヒトはサルに学ぶしかない。ヒトと動物の間に一線を画くことができるものとするなら、それはヒトと、ヒトの最近縁種であるサルとの間に画されるはずだ。すなわち、サルの何たるかを知ったときに初めて、ヒトはヒトの何たるかを知ることができるということだ。この本は、好奇心の塊である立花隆氏が現在のサル学の研究状況をまとめた本であり、この本からサルに対する理解を深めることができる。内容は思いのほかショッキング。

カニバリズムによる集団興奮する「チンパンジー」・群れの解体を促すための子殺しをする「ゴリラ」・全員参加の乱交パーティ社会「ピグミン」・縄張りも順位もない「ゲラダヒヒ」・常に孤独な単独行動「オランウータン」・子殺しで発情する「ハヌマンラングール」など。

この本から、サルにも複雑な社会構造があり個々のパーソナリティも確立されていることが分かる。思ったよりもサルの世界も複雑であり、ヒトとサルとの間に一線を引くには決め手がない。ただし一つ言えるのは、自分の存在の由来を知りたがったり、他の動物の生態系に興味をもって自分の人生を使ってまで研究したり知りたがるのはヒトだけかもしれない。