海と毒薬(遠藤周作)

海と毒薬 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)

読み終えて内臓をえぐられた。やっぱり遠藤氏は深い。
モチーフは九州大学生体解剖事件。米兵捕虜の生きたままの人体実験の話。それを行った日本人医師たちの罪意識を内部の声から描写。それぞれの罪意識には差がある。その描写がなんと生々しく黒い。人間は、バレなければいい捕まらなければいい、という考えが浮かぶ時がみんな正直あると思う。私もある。偽善者じゃないし。
非人道的な物事の人物の内部の心理描写に対して、私が当事者でもそのように考えてしまっただろうと暗黙のうちに納得してしまう。その感覚が私の内臓をえぐるんだ。